この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第139巻収録。外国資本の投資意欲を欠き、南アフリカ経済に大打撃を与えているエイズ蔓延問題。そんななかカレル教授は米国製のエイズ治療薬の複製に力を注いでいた。ところが米製薬会社の利権をまもるため、米国は複製の製造を批判してきた。南アの鉱山エネルギー省長官は南ア経済のため米福大統領暗殺を企図するが……。脚本:夏緑
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本来は錆びにくいはずの金
金はとても錆びにくい金属だ。そんな金の産出国であり作品の舞台となっている南アフリカの凋落を示したタイトルと思われるが、展開はタイトル以上に厳しいものとなっている。
『ビオ・グレゴリオ司教』『ドローン革命』などで舞台となる南アフリカ。本作が発表された2000年頃はアパルトヘイト(人種隔離政策)こそ撤廃されたものの、ネルソン・マンデラ元大統領は政治から引退し、人種間の格差はまだまだ解消されなかった時期だ。サッカーワールドカップが開催された2010年でも治安に注意を促すニュースが多かったことを覚えている人も多いだろう。
ターゲットはアメリカ副大統領
本作で南アフリカの鉱山エネルギー省長官が依頼人となり、アメリカ副大統領の暗殺を依頼する。エイズ治療薬の複製阻止に動くアメリカ副大統領の動きをけん制するという一応の目的こそ示しているものの、ゴルゴへ仲介した黒人の長老の、「どういう結果を生み出すか」と悩む様子に賛同する読者も多そうだ。
当時のアメリカはクリントン大統領政権下のゴア副大統領だった。アル・ゴア氏は2000年11月の大統領選挙でブッシュ大統領に敗北して以降、政界からは引退した格好だが、副大統領時代にこんな形で漫画になっていると知ったらどう思うだろうか。
南アフリカに残された希望
ロイド長官は、「身のほどをわきまえたらどうだ」などと言い捨てる態度からゴルゴに断られたあげく、逃げようとして後ろから撃たれている始末。こんな人間が高官となる南アフリカの厳しい状況が伺える。
また長老すら、「あんた(ゴルゴ)にはとんだ迷惑をかけてしまったわい……」と言った後に撃ち殺された様子がある。ただし、ゴルゴへの依頼を阻止するためロイド長官を殺そうとすらした医学者のカレル教授は残っている。結果的に彼が手を汚さずに済んだことは希望と言えそうだ。彼のような人が活躍すれば南アフリカにも明るい未来があるかもしれない。
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研 修治
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