この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第20巻収録。メキシコの大農場主・ガルシアは、町のチンピラに息子のアントニオを殺されてしまう。犯人は地元警察により逮捕されたが、死刑廃止の法のもと犯人に下される判決は終身刑でしかないと知ったガルシアは絶望。ガルシアはゴルゴを雇い犯人達の処刑を断行する。脚本:K・元美津
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現代だからこそ胸に沁みる一編
時代劇『必殺仕事人』に代表される「恨み晴らします」的ストーリーを現代風にアレンジした本作。死刑廃止が世界の潮流であるとはいえ、まだまだ復讐モノに人気が集まるのはなぜだろうか。
鬼平犯科帳のファンとして知られる里中哲彦さんは、著書『鬼平犯科帳の真髄』で、ご自身の想像の産物と断ったうえでこう書いている。「仇討ちをなくしたってほんとうか。日本人は狂ったのか。いますぐ仇討ちを復活させよ」
復讐モノを読んで爽快感を感じるのは、現代人の心のなかにも里中さんが仰るような感情が抑圧されたかたちで内包されているからだろう。その意味では本作が発表された1974年よりも、いま現在読むほうがより心に沁みる作品なのかもしれない。

通底する男の信義もみどころ
本作ではゴルゴも依頼人のガルシアもルールを無視して互いの心意気に応えている。通底しているテーマは「男と男の信義」だ。ガルシアはゴルゴとは初対面。もちろんゴルゴの経歴など知る由もないが、依頼金を持ち逃げされるリスクをかえりみず2億2千万円を即金で支払う。
一方、非正規のルートで接触してきたガルシアの行為はゴルゴにとってはルール違反。だが見ず知らずの人間に2億強の金を預ける信頼に対し、ゴルゴも仕事で応えている。囚人たちが銃殺された直後、ガルシアはゴルゴに逃亡の時間を確保させるため、散弾銃を手に警官隊を足止めする。社会通念上はルール違反だろうが、これも約束を守ったゴルゴに対する彼なりの信義なのだろう。
ドラマ性を重視する読者に
本作は『ゴルゴ13 各界著名人セレクション』において漫画家の秋元治さんが推薦する一編。秋元さん曰く、「1974年の作品はドラマ性を重視した作品が多い」とのこと。
同じ年代に発表された作品としては『海へ向かうエバ』『ペギーの子守唄』『潜入者の素顔』などがあり、なるほど味のある人間ドラマ・愛憎劇が目白押しだ。小難しい政治・経済モノよりもドラマ性を重視する読者は、この年代、SPコミックスでいえば第17巻~第24巻くらいの作品を中心にトライしてみるのも一興かもしれない。

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町田 きのこ

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