この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第25巻収録。マフィアのボス・マーティの愛人をしている元娼婦・リンダ。上昇志向の強いリンダは、上流階級の貴婦人へ転身するため、障害となるマーティの殺害をゴルゴに依頼する。リンダの計画を知ったマーティは、驚異的な早撃ちテクニックを誇る部下、ビリイに警備をまかせるが……。
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上司にするなら、マーティかビリィか
ニューヨークのギャンブル関連産業を牛耳っているにしては、マーティのキャラクターに重みが感じられない。それどころか言動がチンピラ並みの小悪党くらいに描かれている。だから部下に舐められて、リッキーやその弟たちにマーティを消しさえすれば縄張りは俺たちのもの、と勘違いさせてしまったのだ。
その点マーティの右腕であるビリィはよくわかっており、自分がボスの器でないことも理解している。ただビリィの謙虚さを差っ引いたとして、読者にビリィとマーティ、どちらを上司にしたいかと問えば、ほとんどの方がビリィを選ぶのではないだろうか。
女性の上昇願望を巧みに描写
リンダの上昇志向に共感できる読者はあまりいないのではないか。エピソードが描かれた当時の1975年から時代や文化的背景(そもそも舞台がアメリカ)が大きく変わってしまったこともあるだろう。
ただし、そういった事情を考慮したとしても「貴婦人になりたいのよっ、上流社会で暮らしたいのよ!!」と子供じみたことを声高に言われては擁護もできない。見た目は美しいのだが……。『夜は消えず』のダニエルは娼婦から町長夫人に転身を遂げており、リンダが知ったら羨ましがるところであろう。ただしラストではリンダ同様に不幸な終わり方をしている。
踏んだり蹴ったりのゴルゴ
発注通り仕事をこなしたのにも関わらず、リンダの勝手な妄想で銃を向けられてしまったゴルゴ。全くの踏んだり蹴ったりだ。一歩譲って、一度でも肌を合したことがあったのなら「あんたのようなやくざがわたしをその気にさせるなんて!!」と言われるのも受け止められる(かもしれない)。
しかし今回は勝手に妄想されて、勝手にその気になられの話。さすがのゴルゴも想定外だったのではないだろうか。なお前掲の『夜は消えず』でも、ゴルゴはダニエルの勘違いで命を狙われるハメになっている。いずれの場合も愚痴一つこぼさないゴルゴに超人性を見ることができる。
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片山 恵右
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