この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第94巻収録。フィリピンでは共産ゲリラABB(アレックス・ボンカヤオ旅団)による要人暗殺が異常多発。その裏にはソ連から招かれた射撃教官2名の存在があった。これ以上の犠牲者はだせないフィリピン国軍情報部は、ゴルゴに射撃教官の始末を依頼する。断崖絶壁の訓練所に潜入するためゴルゴがとった行動とは……?
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ゴルゴに金を返そうとした男
冒頭、ジャーナリストを装いフィリピン入りしたゴルゴが、政府軍の検問に遭遇する場面が愉快だ。射撃は素人だろうと高をくくった兵士は、ゴルゴに20m先の案山子(かかし)を的撃ちするよう強要する。賭け金をボッタくろうという算段だ。ゴルゴは面倒事を避けたいがために、わざと的をはずし、掛け金を支払い立ち去ろうとする。その刹那、数人の共産ゲリラから銃撃の雨あられをうけるシーンである。
慌てふためいてジープの陰に隠れる兵士をよそに、ゴルゴは一発必中の精度でゲリラを始末し現場を立ち去る。一部始終を目撃した兵士は、「す、すげえ……」と感嘆。わざわざ賭け金を返そうとゴルゴを追いかける人柄にクスリと笑えてしまう。
二人の暗殺教官が登場
本作最大のみどころはタイトル通り、ソ連の暗殺教官の登場にある。人気テーマである「ライバル対決もの」といって差し支えないだろう。歴代の対決モノとの違いは、ライバルがイゴール&ソフィアの男女ペアであることだ。
これまでの対決モノは『落日の死影』『鬼畜の宴』『バイオニック・ソルジャー』の御三家に代表される一対一の勝負が多かった。一騎当千の凄腕暗殺者とゴルゴのタイマン勝負に胸を熱くしたファンは多いはずだ。しかし本作のように男女ペアとの対決も新鮮で面白い。舞台は“フィリピンの戦い”で有名なルソン島。周囲が切りたった断崖で潜入困難な要塞であるため、そこをクリアしていくゴルゴの手腕もみどころの一つとなっている。
ライバル達の背景描写が対決モノの真骨頂
第5巻『帰って来た標的』には仔黒竜なる殺し屋が登場する。ゴルゴをして「噂には聞いていたが…さすがだったよ」と言わしめた実力者である。しかし唐突に登場し、あっけなく死んでいくため「対決モノ」としての印象は薄い。その点、本作ではソフィアの不幸な生い立ちや、ソフィアに片思いするイゴールの恋心などが丁寧に描写されており、ライバル側にも十分に感情移入ができる仕様となっている。
79巻『スーパー・スターの共演』も世界的狙撃手・二コラヴィッチの転落人生が巧みに描写されており、個人的にお奨めしたい作品だ。このようにライバル側にも十分に感情移入でき、ゴルゴとの対決に収斂されていく様が「対決モノ」の真骨頂といえるだろう。
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町田 きのこ
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