この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第128巻収録。音楽機器メーカーを率いるブラウザー会長は、自ら市民オーケストラの指揮者を務めるほどの音楽マニア。ある日、ソ連がドイツから接収した機密テープを譲り受ける。それはある演奏会を記録したテープだったが、彼は演奏中に一発の銃声が響いていることに気づく。テープを解析し、暗殺者の影を追うブラウザーだったが……。脚本:ながいみちのり
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歴史の陰に消えた暗殺事件
本作にはドイツ総統のヒトラーとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者だったフルトヴェングラーが登場する。ただし、メインに描かれるのはドイツの音楽機器メーカーであるクーゲル・ブリッツ社のブラウラー会長だ。
彼が古い音楽テープに録音された銃声に気づいたことで、ヒトラーの暗殺に父親が単身挑んだことや、父の友人であるフルトヴェングラーがひそかに加担したことを描いている。実際にヒトラーの暗殺計画は何度も計画されたらしいが、本作でわずかに頭をひねったヒトラーの耳元を弾丸が通過したように、何ごともなく終わっている。
銃声をカモフラージュする一打
タイトルの「S・F・Z(スフォルツァンド)」は音楽用語で「特に強く」の意味。狙撃時の銃声をカモフラージュするため、ゴルゴだけでなく、50年前(1998年発表)のスナイパーであるブラウラーの父親も、オーケストラで演奏するバスドラムの一打に合わせて射撃した。
狙撃場所を悟られないようにしたり、狙撃後に安全に逃げられるようにしたりする目的で銃声をカモフラージュすることは度々ある。『ハワード・ヒューズ氏の息子』では西部劇ドラマの撮影における銃声に、『宴の終焉』では祝賀パレード花火の爆発音に重ねて狙撃している。
世界に冠たるドイッチュラント
ブラウラーは音楽テープを自社の音響研究所で専門技術者とともに解析する。ここで何度も出てくるのが、当時のドイツが持ちえた技術への賛美だ。まずステレオ録音について、「1930年代に実用化できたのはわがドイツだけ」とある。
さらに人間の鼓膜に届く状態で録音するバイノーラル録音についても、「当時のナチの技術がここまで進んでいたとは」「さすがは我がドイツだっ」などと言っている。1943年の演奏会シーンのコマを見て欲しい。観客席のど真ん中に録音機械をセットした人形が座っている。しかもご丁寧に軍服姿だ。このこだわりが面白い。
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研 修治
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