この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第12巻収録。ボリビア人民解放軍はフランス大使のマルローを誘拐し、大使の身の安全と引き換えに仲間の釈放を要求する。政府軍は解放軍のリーダー殺害をゴルゴに依頼。しかしマルロー夫人と不倫関係にある政府軍のガルシア少佐は、ゴルゴに無断で救出作戦を行い、どさくさに紛れてマルロー大使を殺害してしまう……。脚本:K・元美津
スポンサーリンク
ゴルゴ13の由来
本作のみどころは登場人物の一人が彼のコードネームの由来を予想する点だ。「ゴルゴダの丘で…主イエスにいばらの冠をかぶせ、十字架にかけた13番めの男」と述べているが、ゴルゴ13のロゴにも茨の冠を被った骸骨が描かれているため信憑性の高い予想と言える。
また『潜入ルート“G3”』ではゴルゴの所持品や能力を事細かに語っている場面があり、合わせて読むことでデューク東郷という人物についてより深く知ることができるだろう。そして『マニトバ』でもみせたゴルゴのお家芸、背後に立った相手に対する条件反射行動が一味違った形で登場するところも注目したいシーンのひとつだ。
暗躍するガルシア少佐
登場人物で注目したいのはボリビア政府軍のガルシア少佐だろう。冒頭からゲリラ相手に活躍が描かれたと思えば、そのゲリラに捕らえられたマルロー大使の妻エリノアとの不倫シーンがあるなど、否が応でも注目してしまう構成になっている。
捕らえられたマルロー大使を救おうとする政府高官に対し、思わず「たかが外国大使ひとり」と言ってしまうあたりが、ガルシアのマルロー大使への本音が垣間見えるシーンである。救おうとする政府と亡き者としたいガルシアの対立こそが本作のキモであり、後の彼の暗躍にも繋がっていく。果たして彼は何をしでかしてくれるのか、要注目である。
殺害と人質救出の両立
本作で特筆すべきなのはゴルゴへの依頼がターゲットの殺害だけではなく、人質となっているマルロー大使の救出も含まれている点だろう。作中、ゴルゴに狙撃するチャンスがあるにも関わらず、ゲリラ達が人質をすぐに殺せるように見せつけながら移動するなどの策を講じているため、ゴルゴは狙撃せずに見逃す場面があるほどだ。そこに人質の死を願うガルシアの暗躍が事態を更に混迷させていくのである。
この混迷極める物語の結末は正に予測不能、最後まで飽きることなく楽しめる作品だ。また余談だが作中、政府のことを「奴らは…白人以外は人間だと思っていないんだからな!」という台詞があり白人と有色人種の確執を描くシーンがある。人種差別問題は『デスマスクの肖像』でも深堀されているが、昨今のBLM問題を考えるための社会派作品としても興味深い作品となっている。
この作品が読める書籍はこちら
小摩木 佑輔
最新記事 by 小摩木 佑輔 (全て見る)
- ゴルゴ13:第22話『Dr.V.ワルター』のみどころ - 2022年1月13日
- ゴルゴ13:第32話『帰って来た標的』のみどころ - 2022年1月7日
- ゴルゴ13:第29話『価値なき値』のみどころ - 2022年1月1日