この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第112巻収録。政界のフィクサーと呼ばれる帝国物産会長・巽。彼には、大戦時にリヒャルト・ゾルゲに匹敵するスパイとして、機密漏洩に関わった過去があった。ある日、何者かから殺害予告をうけた巽。それは大戦中、巽をスパイと知らず忠誠を誓い、最後は巽の裏切りでシベリアへ送られ死亡した部下、堀内からのものであった……。
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元スパイだった黒幕のモデルは?
本作のターゲットは帝国物産の会長である巽千太郎。彼が作中で語るラストロボフ事件は実在するもので、スパイ活動に関わっていたソ連の高官がアメリカに亡命した出来事は当時の西側メディアで大きく報道されている。
ただし少なからぬ人が「まだ何かある」と感じたようで、本作ではスパイ活動に関わっていた巽こそが事件の黒幕とする展開になっている。そこで気になるのは巽にモデルがいるかだ。いろいろ検索すると、それらしい人物は何人も出てくるものの、ピッタリ一致するような人間はいない。数人のモデルを足し引きして作った架空の人物なのだろう。
ゴルゴへの上手な頼み方
命が狙われていることを知った巽は秘書の有木に命じて身を守らせる。ここで登場するのがゴルゴだ。基本的にボディーガードの依頼は受けないゴルゴだが、有木は敵が発砲する前にゴルゴが敵を発見・射殺させる形で依頼したと巽に伝えている。
こうした依頼は『見えない軍隊』『世紀末ハリウッド』でも受けており、頼み方次第でゴルゴを動かすことができる良い見本ともなっている。もっともそうした流れが大きな罠になっていることに巽が、そして読者までもが気づくのは最後の5ページだ。ここは騙しきった依頼人と描いたさいとう先生達にエールを送りたい。
許された事前警告の手紙
あえて種明かしをしてしまうと、巽に数十年仕える秘書の有木こそが、実は巽の殺害をゴルゴに依頼した人間だったのだ。まさに灯台もと暗しで、最も信頼できる味方と思っていた人間に巽は狙われたことになる。なお、巽の元に届いた手紙で狙撃の場所や時間を知らせている。
多くの事件で依頼人にも秘密厳守を課すゴルゴだが、本作や『カオスの帝国』のようにターゲットへの警告の意味で事前の告知を許す場合もある。恩人の恨みを晴らす復讐のために数十年も秘書として潜り込んだ依頼人にゴルゴが情けをかけたように感じるのは私だけだろうか。
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研 修治
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